家賃値上げを断ったら内容証明が届いた話【落とし所の見つけ方】
賃貸に住んでいると、更新のタイミングで突然「家賃を上げたい」と言われる経験をする方は少なくありません。
「断ったらどうなるの?」「法律的にはどっちが有利なの?」
そんな疑問を持ちながら、対応に困っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、管理会社から家賃値上げを提示され、断った結果として内容証明郵便が届いた我が家の実体験をもとに、家賃増額交渉の流れ・法律の知識・交渉のコツまでを詳しく解説します。
家賃値上げを断ったら内容証明が届いた
私は現在のマンションに4年以上居住していますが、2回目の更新タイミングで管理会社から家賃増額の申し入れがありました。

家賃値上げのメールが来ちゃったけどどうしよう。
この部屋も立地も気に入ってるから、引っ越しはしたくないよ。
でも、生活が苦しくなるのもやだな。

ああ、ついにウチにも来たか。
ただ、家賃値上げって断れるって聞いたよ。
どうなるか分からないけど、こちらの意思もちゃんと伝えてみようよ。
提示された内容は「月3,000円の増額」。
金額だけ聞くと小さく思えますが、年間にすると36,000円です。
そのため、我が家としてはこの申し入れを断ることにしました。
結論から言えば、最終的には当初提示の月3,000円増額で合意することになりましたが、その過程では内容証明郵便が届くなど、想定外の展開もありました。
この記事では、我が家が実際に体験した交渉の流れと、同じ状況に置かれた方が知っておくべき法律の知識・交渉術をまとめています。
家賃値上げは簡単に受け入れなくてよい理由【借地借家法の基礎知識】
借地借家法第32条
日本では「借地借家法第32条」により、借主(入居者)の権利が強く守られています。
この条文では、家賃の増減を請求できる条件として以下の3つが定められています。
- 土地・建物に対する租税(固定資産税など)の増加
- 土地・建物の価格の上昇
- 近隣の家賃相場と比較して不相当に低くなった場合
つまり、「値上げしたい」という貸主の一方的な意思だけでは、法律上、家賃を上げることはできません。
引用:借地借家法(e-Gov 法令検索より)
https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090
合意なしに値上げはできない
法律上は、貸主と借主の双方の合意がなければ家賃の増額は成立しません。
借主が拒否した場合、貸主は以下の手順を踏む必要があります。
- 増額請求の通知
- 借主が拒否した場合 → 調停の申し立て
- 調停不成立の場合 → 訴訟(裁判)
逆に言えば、交渉中は現行家賃を支払い続ければ、契約期間が満了しても法律上は問題ありません。
⚠️ ただし、貸主が現行家賃の受け取りを拒否した場合は「供託(法務局への預け入れ)」が必要になります(後述)。
値上げが「正当」とされる条件とは?相場の確認方法
管理会社から「近隣相場が上がっている」と言われたとき、鵜呑みにする必要はありません。
まず自分で相場を確認しましょう。
相場確認に使える公的データ
| 確認先 | 内容 | URL |
|---|---|---|
| 国土交通省 不動産情報ライブラリ | 都道府県地価調査の基準地標準価格・対前年変動率など | https://www.reinfolib.mlit.go.jp/ |
| SUUMO・HOMES等の賃貸サイト | 同一エリア・同条件の物件の募集賃料 | 各サービスサイト |
| 国土交通省 不動産取引価格情報 | 実際の取引事例 | https://www.land.mlit.go.jp/webland/ |
私が調べてわかったこと
実際に調べてみると、同じマンションの別の部屋が我が家の家賃より1万円以上高い賃料で募集されており、近隣の地価も直近2年で6%以上上昇していることが確認できました。
ただし、新規募集の賃料と既存入居者への継続賃料を単純比較するのは適切ではありません。
長期入居者には継続して住んでもらうメリットがあるため、相場より多少低くても正当性がないとは言い切れないのです。
こうした判断を総合した結果、「現行家賃での更新を希望します」と返答しました。
管理会社の反応と内容証明の中身
値上げを拒否すると、管理会社からこんな説明がありました。
管理会社の反応
「近隣相場や修繕費の増加を考えると、本来は12,000円の増額でもおかしくない。
今回は3,000円でお願いしている」
それでも私たちは「現行賃料での継続を希望する」と伝えました。
この時点で契約の満了日を過ぎており、自動的に「法定更新」の状態になっていました。
契約期間が満了しても貸主・借主いずれも契約終了の手続きをしなかった場合に、従来と同じ条件で契約が更新されたとみなされる制度です(借地借家法第26条)。
つまり、更新時に合意できなくても、現行賃料のまま住み続けることが法律上可能です。
内容証明郵便が届いた
しばらくすると、自宅に内容証明郵便が届きました。内容は次のとおりです。
- 家賃を12,000円増額する
- 応じない場合は法的措置を検討する

内容証明郵便なんて「カバチタレ!」でしか見たことなかったよ。
まさかウチに届くなんてね…
漫画の中でしか見たことのなかった内容証明郵便が、まさか自分のもとに届くとは思ってもみませんでした。
「この金額で裁判になったら、弁護士費用だけでも大赤字では…。相手だって本当にやるつもりなんてない」と思いつつも、本気でやってくる可能性もゼロではないと頭をよぎり、心がざわつきます。
気分的には、どっちが先に折れるかを争っているチキンレースをやっているような感じでした。
内容証明郵便を受け取ったときの注意点
内容証明郵便は、「いつ、どのような内容を送ったか」を郵便局が証明するものであり、それ自体に法的な強制力はありません。
受け取っても、すぐに何かが変わるわけではないので、まずは冷静に内容を確認しましょう。
弁護士相談で気づいた「お金以外のコスト」
内容証明を受け取った後、夫もさすがに心配になり、自治体の無料法律相談を利用しました。
弁護士の見解は次のとおりです。
- 現在は法定更新の状態にある
- 貸主が現行賃料の受け取りを拒否するなら供託が可能
- ただし相手が本気なら調停・裁判になる可能性もある
供託とはどんな手続きか
供託とは、貸主が家賃の受け取りを拒否した場合に、家賃相当額を法務局に預け入れる制度です。供託することで「家賃を払っていない」とみなされるリスクを避けられます。
ただし、手続きは以下のとおり、手間がかかります。
- 貸主に受領するよう催告する
- 法務局に出向く
- 必要書類を記入して供託手続きを行う
- 貸主に供託通知を送る
- 翌月も拒否されたら繰り返す…
これを続けていくのは大変だなあと感じた時、思い出したのが弁護士に言われた最後の一言です。
「金銭面だけでなく、時間や精神的なストレスも含めて考えることが大切ですよ」
一度の供託で済むならまだしも、最悪、調停・裁判へ進む事態になれば、金銭的にも、時間的にも、精神的にも大きな負担となるのは明白であり、何よりそんな心配をし続ける生活をすることが果たして良いのでしょうか。。
最終決断と合意の結果
数日悩んだ末、管理会社へこうメールを送りました。
「当初提示の3,000円増額であれば受け入れます」
すると、すぐに「了承しました」との返信。
当初提示の月3,000円増額で合意となりました。
月3,000円の増額は年間36,000円の出費増ではあります。
しかし、近隣相場よりまだ安い水準を維持できたこと、そして精神的な安定と時間を取り戻せたことは、金銭的な計算だけでは測れない価値がありました。
交渉を早期に終わらせたことでFP3級に合格
実はこの交渉期間中、夫はFP(ファイナンシャルプランナー)3級の勉強をしていました。
そして交渉が終結した翌月、無事に合格できました。
もしこの問題を長引かせていたら、勉強する精神的な余裕はなかったかもしれませんし、私自身としてもずっと気持ちがザワザワしていたでしょう。
トータルで考えると、今回の判断は間違っていなかったと思っています。
家賃値上げ交渉で使えるフローチャート
同じ状況に直面した方の参考として、判断のフローをまとめました。
家賃値上げの申し入れを受ける
↓
① 相場・地価データで妥当性を確認する
↓
妥当でないと判断 → 「現行家賃での更新を希望」と伝える
妥当だと判断 → 条件交渉の上、合意を検討
↓
② 管理会社が再提示してきた場合
↓
無料法律相談(弁護士)を活用して状況を整理
↓
③ 「時間・精神的コスト・引越しコスト」を含めたトータルで判断
↓
合意できる落とし所を提示 → 合意 or 調停・裁判 or 引越し
選択肢の比較
| 選択肢 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 値上げに合意する | 精神的安定・時間を節約 | 家賃増加 |
| 断り続ける(供託) | 家賃を上げずに済む可能性 | 手続きの手間・調停(訴訟)リスク・ストレス |
| 引越しをする | 新しい環境・家賃リセット | 引越し費用・手間 |
よくある質問(FAQ)
Q. 家賃値上げを断ったら退去させられますか?
A. 借主が家賃値上げを断っただけで退去を強制させることはできません。
貸主が家賃の増額を求める場合は、まずは双方の協議によって合意を目指し、合意できない場合には最終的に調停・訴訟という手続きを経る必要があります。
ただし、賃貸借契約に別途定めがある場合は契約書の内容も確認しましょう。
Q. 更新を機に家賃値上げを言われたら、更新しないといけませんか?
A. 法定更新の仕組みがあるため、必ずしも新条件での更新に同意する必要はありません。
ただし、管理会社との関係や今後の居住環境に影響が出る場合もあるため、交渉は丁寧に行うことをお勧めします。
Q. 無料で法律相談できる場所はありますか?
A. 自治体(市区町村)の法律相談窓口、法テラス(日本司法支援センター)などで無料相談が受けられます。
弁護士に正式依頼する前に、まず無料相談で状況を整理することをお勧めします。
- 法テラス:0570-078374(平日9:00〜21:00 / 土9:00〜17:00)
- 各市区町村の無料法律相談:自治体のWebサイトで確認
Q. 内容証明が届いたらどうすればいいですか?
A. 内容証明郵便は「証明書類」であり、受け取ること自体に法的効果はありません。
まず冷静に内容を確認し、必要であれば無料法律相談を活用して対応策を検討しましょう。
⚠️脅しとして、「訴訟する」と言ってくることも多いようです。
まとめ
今回の家賃交渉の流れをまとめると、次のとおりです。
- 更新時に月3,000円の値上げ提案を受ける
- 相場・地価データを確認し、現行家賃での更新を希望
- 管理会社から「本来12,000円増が相当」と再提示
- 再度、現行家賃希望を伝える
- 管理会社から内容証明郵便で12,000円の値上げ請求
- 自治体の無料法律相談を活用
- 「時間・精神的コスト」も考慮し、当初の3,000円増額で合意を決断
- 管理会社も即承諾 → 3,000円増額で合意成立
この記事のポイント
- 家賃値上げは法律上、借主の同意なしに一方的には行えない(借地借家法第32条)
- 値上げ要求には相場・地価データで妥当性を確認してから対応する
- 無料法律相談(自治体・法テラス)を活用して法的立場を把握する
- 判断は「金額だけ」でなく、時間・精神的コスト・引越しコストを含めたトータルで考える
- 交渉は感情的にならず、丁寧かつ冷静なコミュニケーションを心がける
賃貸に住んでいる以上、家賃値上げの話は誰にでも起こり得ます。
法律上は基本的に借主側が有利で、「値上げ絶対許すまじ!」と断固拒否し続けるという選択肢もありました。この3,000円増額での決着というのも、まんまと貸主側の思惑どおりにおさまってしまったのかもしれません。
しかし、発達障害がある人はもちろん、そうでない人であっても争い続けることは生活の質を著しく下げてしまいます。
きちんと権利を主張することも大切ですが、納得できる範囲で合意することも忘れてはいけません。
この記事が、同じ状況に悩んでいる方の判断の一助になれば幸いです。
参考リンク
